『部落差別の結果として、子どもたちの「働く力（学力や人間関係作りなど）」が奪われているのは、わかっている。だから、部落差別解消のための運動を続けていかないといけない。けど、今の部落の子どもたちが、就職差別で職を奪われるより、現実問題として、「働く力」が足りずに就職できていないし、就職できても続かない。だから、順番が違うようだけど、学校で「働く力」つけてほしい。』こんなことを地区の方が言われました。
　「学校で部落問題より生きる力を・・・」というのは、今の人権教育の流れに、悲しくも一致しています。しかし、その背後にこんな地区の方の思いをわかっているかどうかは大きな違いです。

　日本政府が高校無償化から朝鮮学校の除外を検討していることについて、たとえ、北朝鮮が拉致問題で制裁をしている現状であっても、やはり、日本にいる在日コリアンの人たちには、責任があるわけでなく、まさしく、朝鮮学校に通うというくくりの中の人たちへの差別そのものだと思います。

　在日コリアンの方と出会い、お話を伺いました。国籍のことや名前のこと、そして、どういういきさつで日本に来たのか？そんなことも聞かせてもらいました。単に国籍だけの問題ではなく、在日コリアンというもうひとつの立場の中で生きている、生きざるをえない、もどかしさを感じさせている事実があります。

　在日コリアン問題は決して国際理解の問題ではありません。在日コリアンという立場は、国籍を超えた揺れる立場なのかもしれません。日本人でもあり、コリアンでもある・・・逆に、日本人でもなく、コリアンでもない・・・。だから、在日コリアンと一口に言っても、さまざまな立場でさまざまな考えがあるのでしょう。むしろ、そういう立場や考えは、増えてきているのかもしれません。しかし、増やしているのも、複雑にさせているのも、在日コリアンがまとまりづらくしているのも・・・日本人の問題なのです。

　永住権を持つ在日コリアンの選挙権の問題ですが、これは、難しい問題です。さまざまな主張がありますが、どれもよくよく考えてみると、もっともだと感じてしまいます。
　税金などを収めているのに、生活権としての参政権がなぜないのか？と言われると確かにとその通りです。一方、日本の国の行方を決めることのできる参政権は日本国籍を持つ人が持つべきだ、という主張も一般的な在日外国人の選挙権なら確かにその通りでしょう。
　しかし、本来あるはずのない在日コリアンという立場を歴史的に存在させてしまったことが問題なのです。どういう解決になるにしろ、日本が責任を負わなければならないことです。