部落出身の彼との結婚でお悩みの女性とメールでのやりとりをしていました。「部落出身を隠すこと」が差別を許すことになることをご理解いただき、ご自分の刷り込まれた差別意識にお気づきになり、戦いたいと考えていただいていました。しかし、現実の近くの幸せをつかみたいと悩み苦しみ、本当の解決にはつながらないとはお分かりではありますが・・・悩んだあげく・・・おかしいことは承知の上、あえてこんな質問をさせてほしい・・・と聞かれました。「どうやったら部落出身を隠せるのでしょうか。」

　彼女は、「どうやったら部落出身を隠せるのでしょうか。」と聞くことは本当の幸せ、解決のために間違っていることは知っているのです。しかし、できるだけ早く彼をとる（その後、親を説得していく）手段としてこう聞いてしまったのです。・・・ここに差別社会の厳しさがあり、「差別」がこう質問させたのです。こう質問することにより、一時的にでも、彼に彼の親を否定させることになり、「彼の親」と「彼」を切り離してしまうことになるのです。

突然のメールお許しください。どこに相談すればよいかもわからず、ネットでここにたどり着きました。

　３年付き合っている彼氏がいます。同じ大学で付き合うようになりました。二人で結婚したいと思うようになり、私は両親にその旨を伝えましたが反対されています。

　私は、比較的裕福な家庭に生まれました。彼氏は普通の家庭（私の両親から見ると貧乏に感じるようです）で、現在は普通に働いています（今の収入も私の両親から見れば貧乏に感じるようです）。両親は、自分たちと同じくらいの普通の（一般から見れば裕福な）ところに嫁に行ってほしい、共働きは苦労して大変で、そんな思いをさせたくないと考えているようです。

　さらに、両親は「彼は部落出身ではないだろうね？万が一そうなら何があっても許さない。」と言い出しました。

　私は、両親から幼い頃から差別的な話を聞いていたので、私にもその考えが染み付いているところがあり、彼に尋ねました。彼は知らなかったため、それとなく両親に尋ねたところ、彼の父はそうではないが、母が出身かも知れない、そして現在住んでいる土地はそうだとわかりました。

　まだ両親には、その事実がわかっているわけではないのですが、私はなんとかばれないようにはできないのかとばかり考えてしまっています。たとえば、転籍してしまうとか、なんとかならないかと。そんな自分になんて汚いのかと自己嫌悪に陥ったり、親を捨てようと考えてみたり、彼と別れようと考えてみたり、本当の自分の気持ちすらわからなくなり、もうおかしくなってしまいそうです。

　彼は私のことも、私の両親のことも理解できないわけではないが、今まで差別されたことがないので、戸惑っているといいます。彼も彼の両親に差別されそうなことを話せていません。

　支離滅裂な話になってすみません。こんな私ですが、掲示板などをみて、まだ涙が止まりませんが、少しだけ考え方が変わりそうな気がします。なにかアドバイスいただけないでしょうか。おねがいします。

　メールありがとうございます。

　つらいですよね。自分がいやになるという気持ちすごくわかります。たくさんそんなメールをいただいています。でも、その気持ちがあなたの美しい気持ちそのものなんですよね。おかしな差別とか偏見とかという世の中にあるものやそれに流されてしまう自分の心の弱さとむきあっているんですもんね。

　ステキな生き方ってなんだろう？と問い続けること、それに負けてしまいそうな自分の弱さと向き合って、それを変えていくために本当に身近なできること・・・もしかしてそれは、自分の意見を人にほんの少しずつでも言っていくことかもしれません。講演会とか誰かとのステキな出会いをしようとすることかもしれません。こうやってホームページをみることかもしれません。するともっと本物が見えてきて「ようし、頑張ろう」になりますよ。もしかすると「時間がかかるけど、親を変えてみようかなあ」になることもあると思いますよ。

　あなたにも子どもができます。いとしくていとしくてたまらない子どもが今のあなたのように自分を嫌いにならないよう、悩むことのないようあなたがステキな生き方を見つけようとしてください。

「頑張らないと・・・」って気づかせてくれた部落差別の問題に逆に感謝しないといけないですね。

　私は、まだ部落出身でも関係ないという考えになれていません。ただただ、彼氏がそうでなければいいのにとしか思えていないのです。

　掲示板をみて、素敵な話をいくつも見て、少し変化があったけれど、それでも、「ばれなければいい」になったくらいです。私は、両親と変わらず差別をしてしまう人間なんだと感じて苦しいです。両親は、彼氏が裕福でないから、反対しています。この上に部落であるということがわかったらもう不可能だと感じながら、何とかばれない方法はないのかとしか考えられないのです。

　私がこう感じてしまうのは、私にいつか子供ができて、その子供が私と彼氏と同じような苦しみを受けることが怖いし、両親が苦しむことが苦しいし、ということだと思います。

　変われる日がくるのでしょうか…

　本当に正直に気持ちを書いてくれてありがとうございます。こうやって私がいろいろなことを書くと、なんかわかんないといけない気持ちになって、わかったつもりになってしまう人がたくさんいます。それで頑張りますって書いて連絡がつかずという人も結構いますよ。いや私がそう思っているだけで本当に変わろうとしている人もいますけど・・・。

　言えることは・・・親にはもちろん世話になっていますけど、それが親の仕事です。いつか子どもは自立して育っていきます。あとはその子どもの人生ですよね。

　と考えると・・・あなたが書いていること・・・私にいつか子供ができて、その子供が私と彼氏と同じような苦しみを受けることが怖いし、両親が苦しむことが苦しいし・・・

　この二つのことの後者は、感謝はしても、大切にしなければならないことは、前者のほうじゃないでしょうか？それが親の役割であり、子どもの役割なのではないでしょうか？

　さあ、あなたが選んで幸せに生きるんですよ。そして、見返りを要求せず自分の子どもへの愛のために、自分の子どもが本当の幸せを将来自立してつかむために・・・あなたが選んで幸せに生きるんですよ。

　と思うんですけど・・・

　何度もメールしてすみません。お話を聞いてくださって、アドバイスもくださってありがとうございます。

　私が選んで、幸せになって、子どもにも伝えていくということ。そうですね、確かにそれが正しいのでしょう。そういった考えに戻れる時もあります、ですが、やっぱり…と思ってしまう時もあり、本当に１時間おきに考えが変わってしまうような不安定な状態が続いています。それにしても、自分に根付く恐ろしく深い偏見の目に驚いている次第です。私がこんな感じでは、両親はもっと深いのであろうと思います。

　今日は、根本的に私がわかっていないことについて教えて頂いてもかまわないでしょうか？現在、どうして部落出身であるということが今だにわかるのでしょう？私の両親は昔、本籍地を移動している人は、本籍地が言えない＝部落の可能性が高いといっていました。でも、転籍をしたことなど、どうしてわかるのでしょう。今は戸籍謄本は本人やその家族しか見れないのでは？結婚届は、戸籍抄本で事足りるのでは？やはり興信所のような所で、現在も調べられるのでしょうか。また、女性であれば、男性の籍に入るような形で籍を築くことが多いと思いますが、それならば男性が部落でないのであれば、本籍地等に移動もなく、戸籍からは女性がそうであることはわからないのでは？

　それともう一点、結婚差別以外には、部落差別はやはりなくなってきているのでしょうか。私の彼氏は、私が彼氏の両親に聞いてもらわなければ、部落であることなど知らないままだったし、今まで差別を受けたこともありません。

　もしご存知であれば、お教えください。

　少しずつですが、私がいつか両親と話し合う時に、心配しないでといえるように、もっと勉強していこうと思います。

　見ず知らずの私のメールに、こんなに優しくお答えいただいて、本当にありがとうございます。誰に相談すればいいのかも何もわからなくて、このままではダメになってしまいそうでした。

　後者の質問ですが、確かに人権教育のおかげであると思いますが、目に見える差別はなくなってきています。人権教育によって、差別っておかしいという人が増えてきているからだと思います。自分に直接かかわらなければ誰でも学習すれば差別はいけないことぐらいわかります。しかし、結婚となると、日本独自の昔の「いえ」制度のように、個人というよりは、○○家に属する人としてみんなが扱われますから、自分と同じ家族となってしまうのです。そうなると、自分が差別を受けるかもしれない・・・となるのです。

　世間に本当に差別があるかどうかわかりませんが、その世間を恐れ、差別はいけないとわかっている人でも、「私はいいけど、世間が、・・・。親戚が・・・」と差別をしてしまうのです。ですから、私は、世間の中に差別があるのではなく、自分に自信がなく、世間を恐れる心の中に差別が起こるのだと思っています。だから、誰の心の中にも差別は起こりうると思います。そんな醜い心と戦うことが人権学習であると思っています。

　前者の質問ですが・・・部落出身は隠そうとすれば隠せます。ですが、先ほど書いたように、結婚となると、「私はいいけど、親戚が・・・」と言って暴こうとする人がいるのです。興信所はもちろん条例や法律で差別につながる情報を集めることは禁止されていますし、人権教育研修も始まっています。しかし・・・現在でも起こりうると思います。

　それに、隠そうと思えば隠せると先ほど書きましたが、人権学習をすればするほど、その隠すことが自分の親、祖先を否定することだといやになってきたりします。

　だってやっぱり差別するほうが悪いんです。かわいそうなんですよね。差別されるほうが隠す必要ないですからね。

　私が「隠せばいい」と考えるようになったのは、インターネットで同和教育のアンケート結果か何かを見たとき、部落内外での結婚がうまくいった事例の多くが、「部落解放活動に参加しないこと、部落であることがすぐにはわからないようにすること」という条件のもとに叶ったというのがあったからです。でも、隠すということは、自分の先祖を否定することになるんですね…気付きませんでした。そうですね、なんとも失礼な話です。

　自分の考え方を見つめなおしていて、みんな差別がいけないことだなんてわかっているんだけど、それはやっぱり自分とは関係のないところでの話なんだとわかりました。これは、簡単にいうと、部落でないことの優越感…少し語弊がありますけど、上にいるつもりで、部落の人と結婚することで、親戚になることで、せっかく上にいたのに下にいってしまうという気分が働いているんだと思います。下の人に対して目に見える差別をするつもりはないけれど、下の人になるつもりはない。そんなところでしょうか。

　部落内外の人が結婚するには、差別に打ち勝つ心をもっていなければ幸せにはなれないのですね。自分の醜い心と戦う機会を与えてくれているんですね。

　将来、自分の子どもがつらい思いをしないように、私が幸せにやっていくという気分にはなってきました。あとは、親をかえるための戦い、苦しませる苦しみに打ち勝つための勇気というか、覚悟を決めること。これがまだ、完全にできていない感じです。

　この話を彼氏とするようになってから、私の精神状態があまりよろしくないため、彼氏を困らせています。本当につらいのは、泣きたいのは、私ではなくて彼氏の方なのに。そう思うと、自分の感じていることや考え、悩みなどを彼氏に伝えることもできなくなって…でも一度、しっかりと話し合ってみようと思います。

　やっぱり、親より自分だと思うんですけどね。親は大切な子どものことですから、必ず理解してくれる日が来ると思います。だって、親の反対は理解不足からくるものであり、決して親自身が困るということより、自分の子どもが部落の人と結婚して不幸になるという間違った考えからですから。

　しかし、私は○○さんの決断はたとえどうであれ考え抜いた決断はすべて正しいと思いますからね。いえ、その後の行動などで必ず正しくする責任があると思います。ですから、私のアドバスはあくまでアドバイスですから・・・。

　それと、このメールのやりとりを彼に見てもらうっていうのも○○さんの気持ちが伝わる一つのやり方かなって思います。

　彼にメールのことを話しました。中身も伝えました。それから二人で話した結論ですが、私達は出身を隠す方法を知っておきたいと考えています。管理人さんのご存知なことを教えていただけないでしょうか？もちろんそれを実行するかどうかはわかりませんが、とりあえず知りたいのです。それを知り、どう考えるかはこれからですが…どうかお願いします。教えて下さい。

　さて、前回の件ですが・・・いろいろと悩みました。部落出身を隠すということが、部落のこれまでの先輩たちを否定することになるのでは・・・と考えてしまうからです。それに教え子にもそんなことするな！ちゃんと向き合えば、本物の自分と出会えるし、本物の仲間と出会えると常に伝えてきました。

　ですから、その答えは「できません」でお願いします。