私の出身は広島県です。今はどうかわかりませんが、中学生になると「同和問題」という授業が始まりました。当時は「？？？えっ・・・歴史で習った、エタ・ヒニン・・・ってのがあるの？？今？？？はあっっっ？？？」と驚いたものです。また、在日コリアンの方がとても多い所でした。クラスの半分は在日の方で（もちろん、誰もカミングアウトはしてません。私の親友が在日だということを話してくれて、わかったのです）今、思えばコリアン文化があちこちにありました。
　実際、私の周囲にはこれといった差別はなかったのですが（あったかもしれませんが、私の目には入っていません）ある時、意味もわからず「バカでもチョンでもわかる」という言葉を覚えて、父の前で言ったことがあるのです。私にしてみたら、「どんな頭の悪い人でもわかることだ」くらいの意味でした。父は火がついたように怒り、「二度とそんなことを言うな！！！それは朝鮮の人たちを差別する言葉だ！！！」父は被爆者です。相当な差別を見てきました。それゆえ、差別こそ日本人の正体だ！！と怒り狂ったのです。
　私はコリアンの人たちを差別したことは自分ではない、と思っていたのですが、周囲の大人たちが「韓国製は信用できない。日本製が一番だ」と言っていたので、そのまま私もそうなんだ、と信じ、カミングアウトする前の友人に言ったことがあるのです。
「韓国製はねー、モノが悪いんでしょ？？」
　すると「それは韓国への差別じゃないかしら？」と言われ
「えっ？？？差別なんてしてないよ？？」
「韓国製品が悪いなんて、使ったことあるの？」
　どうして、こんなに突っ掛かるのかなー、とその時は思ったのですが、後から、私は大人が言うことをそのまま信じ、結局は差別発言をしたのだ・・・と思いました。確かに、当時の韓国製品は今よりも粗悪で、経済状態もよくなかった。しかし、確かに私は韓国製品なんて使ったことはなかったし、使ったこともないのに、決め付けたのは事実です。
　先日、兄と部落差別についての話題になりました。兄ももう５０才手前。「俺の友達で○○っていたじゃん？あいつさ、部落の女の子と付き合ってたんだよね。もちろん、俺らはそんなこと知らなかったよ。だけどそいつの親がさ、その子は部落の女だから付き合うのはやめろって言われて、色々考えた挙句、別れたんだわ。彼女ね、理由は何も聞かないで、すんなり別れたのよ。今思えば、そんなこと何度もあったんだろな。俺もお前も、親父の教育で差別は絶対にするなって育ってるじゃん？でもね、生まれてくる子どものこと考えたら、俺も躊躇したかもしれないんだよね。今なら別の選択するよ。けど、若かったからね・・・」兄のこの話を聞いた時、部落問題とは、何と根深いものなのだろう、と震撼しました。
　私は、情熱的で突っ走る人間なので、好きな人がどんな人であれすべてを捨てても飛び込みます。（実際、そうでした）しかし、「子どもが苦労するんだ！」と言われるとハタ・・と考える人もいるのだ・・・と妙に感心したくらいです。
　「でもさ、パパも被爆者だってだけで、すごい差別にあってたんだよ？被爆者だってことだけで、ピカがうつるって婚約破棄されて、自殺した人、たくさんいたんだよ？」兄は黙っていました。何だか、同和問題と被爆者差別問題は、紙一重かもしれない、と感じた一瞬でした。
　幸い、私はそういった差別はありませんでしたが、広島の一部の学校、特に救護所になった地域では、私の世代では徹底した原爆教育がありアメリカ軍が撮影したドロドロに溶けた人、真っ黒焦げになった人、もうこれでもか！！！とフィルムを見せられたものです。動画ですよ。小学校１年で。あまりのことにガバッと顔を伏せると教師（実際に介護していた人たち）が「伏せるな！！目をそらすな！！！これが原爆なんだ！！！」泣きながら見ました。今では乱暴すぎでしょうね。でも、ここまでされて、初めて私は原爆の恐ろしさを「本当に」知ったのです。
　見た後は、全員顔面蒼白。フラフラとしてその後、２ヶ月くらい眠れない、寝ても悪夢に襲われる。私も３ヶ月近く、まともに眠れませんでした。しかし父はこの地獄をその目で見たのだ・・・・どれほど、悪夢に襲われたことだろうか・・・
　今、はだしのゲンが閲覧禁止だ何だと騒いでますが、はああああ？？？？です。あんなの甘いですよ。たかだか、絵ですわ。実際のフィルム見せて、絶望させなきゃ核の恐ろしさなんてわかりません。
　同和問題と同じだと思うのです。私は民俗学に興味があり、個人的に研究しているのですが、部落差別をされてきた理由の中に「ケガレ」を嫌う日本人の感覚もあるのかもな・・・古代の日本人は、血や死をケガレと嫌い、モガリという期間までもうけました。今でいう忌引きとか、初七日だとか、そうですよね。生まれたての赤ちゃんも七日間というモガリの時期を経てからお披露目されます。
　死や血に従事している人間をケガレだと忌み嫌う・・・そこから始まったのでしょう。古代の人間は、ケガレは感染するものだと信じられていました。モガリの時期を越えたら、平常になる。しかし、常に血と死に従事する仕事の人がいれば・・・？忌み嫌うでしょう。しかし、習慣になってしまえば、意味なども理解しません。それが「バカではチョンでも」の私に通ずると思うのです。
　そして、兄のような高等教育を受けた人間でさえ、自分はよくても子どもが差別されたらどうするのだ！と言われた時、躊躇するかもしれない事実・・・。人って何なのでしょう？一皮剥けば、骨格も同じ。何も変わりません。
　昔、付き合っていた人に（２０年以上前です）「アメリカに黒人大統領が生まれないだろうか、そうなったらすごいよね」「無理だよ。人種差別は、なくならない。黒人大統領なんて、アメリカではありえないよ。それだけ、人種差別というのは根深く怖いんだ」しかし、その後、マンデラ大統領、最近ではオバマ大統領、と誕生しました。
　日本人って、差別といじめが本性なんだ。亡き父の言葉が耳から離れません。



　メールありがとうございます。読み入ってしまいました。私は、教員として、様々な立場の子どもたちと出会い、そこで、部落問題、在日コリアン問題をそれぞれの立場の人たち（子どもたち）の思いから実感し、勉強させてもらいました。
　私自身兄が生まれつき小児マヒで車いす生活をしていて、普通に兄弟の関係でけんかもしていた一方、兄のメカ好きや外国好きなど兄を尊敬してもいました。その時は、障害があることは当然のことで、兄の個性としてぐらいしか感じていませんでした。だから、良くも悪くも兄の障害に向き合っていなかったと言えるのかもしれません。しかし、ある時（小学校４年くらい）、兄が障害を持っていることに向き合うようになります。そのきっかけは、友達の障害者を馬鹿にするような発言であったり、障害者を真似をするような行動でした。そのとき、隠さなきゃと思い、それが当然なんだと感じていた自分がいました。そのことが間違っていることに気付いたのが・・・実は、あなたのような前向きな人（私の場合は中学生でしたが）と出会ったときです。そのとき、この子とつながりたいと感じたとき、自然に、兄のことを隠しけなしていた自分のことを語ったのです。自然に涙がでてきました。そんなことを今でも覚えています。それ以来、人権学習にはまってしまって、こうやってＨＰも作り、あなたのようないろいろな人とのつながりを楽しんで（？）います
　あなたが書いているように、差別というのは、誰もがダメということはわかっています。でも、親せきが・・・子どもが・・・世間体が・・・としがらみを感じたとき、自分の心の中に生まれてくるものだと思います。だから、だれもがそんな弱い心と戦うことこそが人権学習だと思います。自分の弱い心と戦うために、仲間とつながっていくのです。だから、今回あなたとこうやってつながりができたことをうれしく思います。
　私も原爆のことなどは全く知らないいことばかりです。今話題の松江市の近くに住んでいます。また、いろいろ教えてください。情報交換などができたらうれしく思います。